周回遅れの学び

悪口は言いません、が、提灯持ちでもありません。

佐倉統「科学とはなにか」

昨年来のCOVID-19をめぐる世界各国の動向を見るとき、各国での政治のリーダーシップや法体系に加えて、国民の科学的リテラシーや、いわゆるリスクコミュニケーションのあり方も評価軸に加えてよいだろうと思う。

人口に膾炙した「PCR検査」、「コロナウイルス」、「ワクチン」などは、医学や生物学に由来する用語であるが、それらを僕はどのように知り、またどの程度まで知っているか、その正確性については、はなはだ心もとない。

知ることが大切だと改めて思う毎日だ。

コロナウイルス以外にも、5G、AI、EV、量子コンピュータなど、我々の生活を取り巻き、また今後大きく影響をもたらしそうなものについて、いかに接していくべきかを知ろうと思い、本書を手に取った。

著者は、河合雅雄のもとで霊長類学の研究に携わった後、科学と社会のかかわりに問題意識を寄せ、研究を重ねてきた東大教授。

科学史を軸に、社会が科学にいかなる関心を寄せ、それらに科学がいかに応えてきたか、数々のエピソードを挟みながら、今日に至るまでの道のりを語っている。

帯にもある「科学技術」は、「科学」と「技術」を組み合わせた造語であり、しかもそれぞれが意味を持つことなど、恥ずかしながら認識を新たにさせられた。

全体の体裁は、学術書ではなく、エッセイの趣すらあってサクサクと読める。

しかし、科学はネットワークを形成し生態系に擬せられること、現在の形は進化の結果であること、最後に、生態系を飼い慣らすように科学も飼い慣らす必要があること、とりわけ最後の点において、専門家にゆだねるだけでなく、市民的活動も科学に貢献しうることなど、新たな見方を知ることができた。

 

科学史の展開だけでなく、最近の科学の動向も触れられていて、将来のある高校生や大学生が読むといいと思う。

科学論文はいかにあるべきか、日本で科学を研究することの大変さに加えて、日本が得意とすべき科学領域など、科学史に精通した著者ゆえの見解も述べられている。

最後の点なんかは、勤め人が読んでも、有益だろう。